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最高裁判所第一小法廷 昭和37年(オ)422号 判決 1962年12月06日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士田坂戒三の上告理由第一について。

原判決認定のような事実関係(原判決引用の第一審判決添付明細書の本件債務名義の表示中、判決言渡年月日が昭和三一年一二月七日とあるは記録に徴し同年二月七日の誤記と認める)に徴すれば、破産者が本件強制執行をうけるまでの間その害意ある加功の事実が認められないこともなく、原判決は措辞いささか明確を欠くが、結局右趣旨を認定の上、破産法第七二条一号を適用したものと解されないこともない。所論はひつきよう原判決を正解しないことに由来するものであつて、採用できない。

同第二について。

所論は、原判決が受益者の知情に関する立証責任を転嫁したという。しかし、破産法七二条一号によつて破産管財人が否認権を行使するには、破産者の悪意あることを立証する責任はあるが、受益者の悪意を立証する責任はなく、むしろ受益者が否認を免れるためには、その行為の当時破産債権者を害する事実を知らなかつたことを立証する責任あるものと解するを相当とするから、所論は独自の見解というの外なく、採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七 裁判官 斉藤朔郎)

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